「期待に添えなくてすまないな」


その一言にアラダは不敵な笑みを返して見せた。


「その自信がどこまで本当か。ここでゆっくり見物させていただくわ。地獄へは私が送りこんであげる。せいぜいあがくといい」

「後悔すると思うがな」

「……そうなるといいわね」


相手も負けず劣らず、口がへらない。


どうやら今回は自分に従順な輩は一人もいないということのようだ。


ならば。



「次に会った時には付き従うと頭を地面にすりよせて懇願できるよう、準備しておくといい」



言った後、ジジィに視線を向ける。


ジジィはなにも言わなかった。
ただ、その瞳には自分の心の小さな扉をノックするくらいの力はあった。



「頼む」


一言だけ残し、背を向ける。



あのクソジジィにはこの一言だけで十分だろう。



背中の向こうでジジィがニッと笑ったような気がした。