聖男子マリア様 番外編  俺様天使奔走中につき

「醜いな」

「お互いさまでしょう」


自分と女のやり取りに二つのため息が聞こえてきた。


「どっちもどっちだろうに」


という声なき声すら聞こえてきそうな顔で、ジジィとマリアが見つめていた。



「『役職付き』なのに、手を貸してもらえないと何もできないなんて無様ね」

女はそう言って二人を眺めた。
それから面白そうにふふんと鼻を鳴らすと「いいでしょう」と言った。


「命の雫の場所と取り方は教えてあげる。ただし、一人はここへ残していくこと。残していった者は残りの二人が戻ってくるまでの間、森のバラの棘に縛り付けにされる。痛みと苦しみで正気を失うことになると思うわ。もしかしたら、その魂魄も失うかもしれない。それでもと言うのなら……どうかしら?」


ちらり。
女は二人を見、それから自分に向き合った。


悪魔の瞳が悪意に満ちて鈍い光を放っている。


くだらん交換条件だ。


そんなことで自分が辞めるとでも言うと思っているのだろうか?



「じゃ、決定じゃな」


振り向くと、ジジィが自分の隣に立っていた。


「その役目はわしじゃ」

ジジィはそう言うと自分を見た。


「交換条件など聞き入れずに探せばいい。おまえの出る幕ではない」