「……複雑ね」


マリアはそう言うだけでツッコミはしてこなかった。
ジジィのほうも、そこらへんは分を弁えているらしく、突いては来ない。

まぁ、ツッコまれても。
突かれても。

答える義理などないし。
答える気もさらさらない。


分かってほしいと思わなければ。
分かりあえるとも思っていない。

話したところで同情されるのも、それはそれで厄介すぎる。


多くと関われば、それだけ思いが交錯する。
その狭間に立たされて。

選択を迫られる。



考えたくない。


煩わしいことだ。



「行けば分かるだろう。森を管轄統治するはずの妖精が……どうしてそれを怠っているのかな。『役職付き』として、それも放っておけないしな」



じっくり周りを見回して、そう二人に告げた。


よくよく見れば。
森は荒れ放題だ。


地の果てとつながっている場所を作る深い森。


そう言えど。


そう易々と侵入経路を形成してもいいなどと、あの『法務省』の『管理官』が許すはずがない。


「何もなければいいがな」



自分の何気ない言葉に、二人の顔が一気に曇る。