「にしても、あれじゃな。この森は……昔はこんな荒れていなんだと思うんじゃがな。どうしてこうも、暗い森になったんじゃね?」


ジジィが怒りに満ちた森をぐるりと見まわしながら言った。


「確かに……言われてみれば、そうね」



マリアも同じように森を見つめる。



「手入れをしなければならぬ者が、手を抜いているのではないのか?」

そう言った途端に、二人揃ってため息をつかれた。


「無関心な男」

「ほんとに……一人以外には興味もないのだのぉ」

「何が悪い?」


そう。
何が悪い?

ガブリエルのように、次から次に関心がいくよりはマシだろうが。


「あっちも問題じゃが……『お主』のような『偏り』もまた……」

「『役職付き』としては問題だと思うわよ」


またしても。
またしても強調したな、こいつ等。



「自分はこの森には滅多に出入りしたことがない。むしろ避けていた。それに……幼かった自分には、あまり記憶がない」


正直。
この森にはあまり足を踏み入れたくなかったのだ。


ここにはあまりいい思い出というか。
思いがない。


だから、見ないようにもしていたし。
役職付きになってからも足を踏み入れたのはこれが初めてのことだ。