彼の声が聞こえる。


ダメだ……



か細くなっていく声。
とぎれとぎれで、消えてしまいそうな声。



「集中できないよなぁ、ミカエル?」

「黙れっ!! この下郎が!!」


遙かに昔。
天使だった頃から見知っている悪魔に向かって叫ぶ。


昔から嫌いだった。
昔から胸糞悪く、この顔を見るたびにイラつきを覚えていた。


おしゃべりで、高慢で。

触れられたくないことを平気で突いてくる。

そういう輩。


そして、その相手に、今一番大事な者を傷つけられた。



「おまえなどの汚らわしい毒に、私のマリアは殺させない!!」


怒りと憎しみで胸の中が冷たい。


この感情は抑えなくてはならない。
この感情をこれ以上噴出させてはならない。


自制をかけようとしても、彼の声が弱弱しくなっていく状態では、それは難しすぎた。