窓の外はすっかり闇に包まれ、街灯の灯りが街路樹の葉っぱに透けて、柔らかい光を放つ。
教室の中は、外からの光に淡く照らされるだけのほの暗い空間で、心地よい。
救急車がけたたましいサイレンとともに、通り過ぎて行った。その音が遠ざかるのを待って
「やっぱり」

というつぶやきが聞こえた。
自分の気持ちがマイにバレているのは、なんとなくわかっていた事だ。
マイが、自分の恋愛感情を知っていて、それでもなお近くに居る事を許されている、と心のどこかで思っていたのかもしれない。

つまりは、マイも私に、少なからず好意を持っている、と。

胸の鼓動は相変わらずの激しい運動を繰り返している。

マイの気持ちは?
知りたい!

「あたしは言ったんだから、マイも白状してよね」

かなり必死な表情になっていただろう。どうしても今、マイの気持ちを聞きたいのだ。

すると、マイはすっと薄笑いを消して、まっすぐ窓の外を見据えた。

「言わない」

と。抑揚のない声色で。
なぜだ?
なんで言わない!
照れているとか?いつも素直に自分を見せる事はないけれど、今日くらいはマイの本当の声が聞きたい!

「なんでだよ~」

とりあえず、自分の必死な気持ちは抑えて、ふざけている雰囲気で迫った。
あまりがっついたら逃げられてしまう。
今までのマイとの付き合いで学んだこと。

「ずるいなー。おしえなよー」

「うるさいなー」
明らかに不機嫌な声だったが、本気で怒ってはいない。
そこで、さらに追求してみる。
マイの両手首を掴んで、自分と向かい合わせた。しっかり目を見てさらに言う。
「おしえなよ。ね、誰にも言わないから」

「しつこい」

マイの目が、頑な意志を語っていたので、もうちょっとふざけてみよう。
彼女はくすぐったがりだ。両脇をガシッと掴んで、そのままぐちゃぐちゃと 全ての指を使って掻き回す。

「言え~!」
「やっ、やめてよっ」

さすがにこれは効いている。言ってくれ!

「もうー、しつこい!」
そうマイが言ったと思ったら、あっという間に背後にまわられていた。
そして今度は私の脇を、がっちり羽交い締めに…
そして手のひらで私の口をガバリと覆った。