「涼の親は…どんな人なの?」
少し困ったようだが、すぐに話を始めてくれた。
「両親とも、周りから見たらすごくいい人だと思う…
父親なんて超真面目だし、頭もいいし。
だけどずっとエリートで来たから、できない奴の気持ちとか分かってくれないの。
酒がないと生きてけないし、里奈の親みたく強い人じゃないんだよなぁ」
お酒…
あ、だからあの時あんなに悲しそうだったのか。
「この間は涼の気持ちも知らないで、無理に飲ませたりしてごめん…」
「別にいいよ、気にしてないし。
ほぼアル中状態なんだよ、うちの父親。
だから飲むと暴力ふるってくんの。
しかも中学入ってからいきなり落ちこぼれた俺にだけね。止めない母親も母親だよね。
だから俺は…酒はできるだけ飲まないようにしようって決めてるって訳。
ごめん、暗い話で」
「そんなことないよ。
教えてくれてありがとね」
ほんの数十分前より、ずっと彼のことを近くに感じられている気がした。
そんなことを聞いたら、愛しくなっちゃったじゃない…
よっぽどそう口に出そうかと思ったけど、我慢した。
そのかわりに、その細い体を抱き締めた。