嘘吐き


相変わらず忙しいなぁ


「いいお母さんじゃん」


ドアが閉まる音が聞こえると、そう涼が言った。


「自由にさせてくれるからね。
まぁ、男と一緒にいるのを見られたのは初めてだから相当びっくりしたみたいだけど」


「お母さんの慌てぶりもなかなか面白かったけど、里奈がママって呼んだ時は吹き出しそうだったよ」


涼が思い出し笑いをしながら言う。


「うるさいな、小さいときから呼ばされてたの。

涼くんの上手な敬語もかなりおもしろかったけどね」

「俺だって敬語くらい使えるって」


さっきまでの緊張した空気は、母の突然の訪問ですっかりどこかへ行ってしまっていた。


ふと、

ずっとこのままこんな風に暮らせたら、私もだいぶ穏やかになるんだろうな

なんてことを考えてしまった。