「ただいまー」
約一ヵ月ぶりに母親の声を聞いた。
今日は一段と声が高い。
どうやら機嫌がいいようだ。
それが今のこの部屋では浮いてしまう。
「おかえり」
見慣れない男の子に、とても驚いたらしい。
しかも明らかに娘よりも数歳若い子なんだから当たり前か。
「里奈、その子は…」
私が言葉を発しようとすると、涼の声でさえぎられてしまった。
「桜井涼と言います。
里奈さんより歳下で、いつもお姉さんみたいに仲良くしていただいてます。
お母さんのいらっしゃらない間にお邪魔しちゃってすみません」
よそ行き用の彼の言動を見たらおかしくてつい吹き出しそうになる。

