嘘吐き

「夏休みももうすぐ終わっちゃうけど、まだ家にいて本当に大丈夫なの?」


そう言うと少し淋しそうな目をした。


「あーそろそろ言われると思ったんだよね。
実際結構やばいんだよな。

でも次帰ったときには、リアルに殺されちゃうかも」


冗談混じりに言って笑ったつもりだろうけど、その言葉には現実味がありすぎて怖くなった。


「本当のところ、私も帰したくないんだけどね。

そういえば、涼の家ってどこにあるの?」


「この近くの駅から、電車で1時間くらいのとこかな」

思ったより遠くに住んでるらしい。


「それじゃあなかなか会えなくなっちゃうね」


すると涼は、いきなり抱きついて甘い声でこう言った。


「ずっとここに居させて。何でも言うこと聞くよ?」


急に甘えられても困ってしまうだけだった。


ここは大人らしく冷静を装うべきなんだろう。


「…もうちょっとそれについては話し合うべきね。
まぁ、まだ夏休みの終わりまでは1週間くらいあるわけだし。」

腕を退けて、できるかぎり落ち着いた声で答えを曖昧にした。


「はーい」


濁されたことが納得いかなかったのか、不満そうな顔をして黙り込んでしまった。