改めてリビングで落ち着き、カイは二杯目のアイスココアを飲み始めたところだった。

 ミアはカイにユリアの事を尋ねた。どんな人なのか、と。


「え?ルイト、ユリア呼んだのか?」

「うん。そう言ってたよ。」


 ミアが言うとカイは露骨にいやそうな顔をした。


「俺さ、ユリア苦手なんだよ。」

「そうなんだ。」

「だから・・・逃げるわ。」

「はぃっ?」



 ミアに止める暇はなかった。

 カイはダッシュでベランダに飛び出すと・・・そのまま消えた。


「こらっ!カイっっ!!」


 キッチンで後片付けをしていたルイトがあわてて後を追おうとしたが、既に地上に飛び降りてしまった(ここは目測でも十階近くのはずなのに)カイは脱兎のごとく逃げ去っていた。


「まったく、もうっ。」


 開け放たれた窓からむっとするような空気が流れ込んできた。

 そういえば今は夏だった。この部屋の中が快適だから忘れてしまっていたが。



「まあ、カイは放っておいても大丈夫だと思うんだけど。強いし。」


 やれやれ、といった口調のルイト。


 カラカラ・・・とベランダに続く窓を閉めて。



「でも今度ミアに何かあったときはどうするつもりなのかな?」

 にっこりと笑ったルイトのその微笑みが怖かった。