そこでミアははっとした。
 今の映像は夢か現か幻か。


「もう・・・わかんないよ・・・!」


 ミアの瞳からまた涙が滑り落ちた。







 どのくらい経っただろう。

 ドアに体を預けたまま糸の切れた人形のように涙を流すミアを現実に引き戻したのは、ノックの音だった。


「おい、ミア。そろそろ出て来い。」


 カイの声だ。


「いい。ここにいる。」


 少し涙声だったかもしれない。

 カイもそれを察したのか、一瞬沈黙があった。


「・・・入っていいか?」

「あんまりよくない。」


 多分見せられる顔じゃない。

 そう言いつつも慌てて腕で涙のあとを拭いた。


「入るぞ。」

「!」


 ミアの言葉を完全無視したらしく、もたれていたドアが押される感じがした。


「あ!このやろ、押さえてやがるな!」

「無理に入ろうとしないで!」


 もちろんミアの力ではかなわない。

 ドアを無理やりこじ開けたカイが部屋に滑り込んできた。


「何するの!」

「入るな、とは言わなかっただろうが!」


 めちゃくちゃな理由を言い、カイは腕を組んでミアを見おろした。

 その灰色の瞳にはかすかな怒りが浮かんでいた。


「何で、出てこない?」


 静かな声。



「俺たちのこと、そんなに信じられないか?」