寝室に入ったミアは、そのままドアにもたれかかってずるずると座り込んだ。

 内容は聞き取れないが、扉越しにカイとルイトの声がする。


「はあ・・・」


 大きく息を吐いた。

 少し、楽になった気がした。




 あの二人を信じたくないというわけではない。
むしろ、信じたい。少し話しただけでも分かっている。
あの二人が悪意を持っていないのだろうということも、何より自分を大事にしてくれていることも――


 ただ、怖いだけ。何も知らずに二人についていっていいのか。
信頼してしまってもし取り返しのつかないことになったら・・・


「う・・・」


 ぽろぽろぽろ・・・

 昨日散々泣いたはずなのに。

 まだまだ自分のなかに涙は残っていたようだ。




 得体の知れぬ恐怖が自分のなかを支配する。

 『何もわからない』『どうしていいかわからない』ことが恐怖につながるなど、思ってもみなかった・・・

 もうどうしようもなかった。


 カーテンを引いた薄暗い部屋の中で、ミアはただただ涙を流し続けた。







 ミアの涙でかすんだ視界に、かすかな幻影が映る。

 たくさんの人がいる。しかし、自分からはかなり遠い。避けられているのだと直感的に悟った。


「あの子が例の・・・」

「全くルナ様は何をお考えなのか・・・」

「『力』を失うことを恐れはしないのか・・・」


 背筋に悪寒が走った。目の前の人々から発せられた敵意のせいだ。



――存在してはならないもの



 そうだ。それが自分に与えられた称号・・・