「日本だけなの?」


 ミアは受け取ったカップのミルクを口にしながら問う。


「うん。ほとんどそうらしい。島国だったから、遺伝子は大陸から隔絶されて伝えられた。あ、そうそう。ミアって目の色、青だよね?」

「うん。さっき見た。」

「でも、普通の人――『力』を持たない人間にはちゃんと日本人と同じ黒色に見えるんだ。普通の日本人として、ね。髪の色もそうだよ?僕も他人から見れば生粋の日本人ってわけだ♪」

「それはなぜ?」

「先祖たちは『力』を隠していたからね。その名残だって言われてる。だから、『力』を持たない人間には僕らを見分けるすべがない。」


 唇に人差し指を当てて、ルイトはそう言った。


「いいでしょ。仲間にだけ分かる目印だよ。」

「黒髪で黒い瞳の『力を持つ人』っていないの?」

「うーん、一応いるんだけど・・・まあ、それは後で話すよ。大事なのは、その仲間たちが少しずつ集まりはじめちゃったってこと。それは『学校』という形で世間には知られている。小学校から大学までエスカレーター式の名門校として、ね。」

「そうなんだ・・・。」

「そう。『力』を持ってる子供たちはそこに集められる。そうして・・・」




 ピンポーン




 そのとき、突然チャイムが鳴った。

「・・・誰だろ?」

 ルイトの表情が引き締まる。

 整った顔立ちだけに、真剣な表情のルイトは近寄りがたい雰囲気をまとう。
 ルイトは足音を消し、ドアに忍び寄る。そして、気配を探るように目を閉じた。・・・が、それも一瞬で。



「カイ!」


 ばたん、と騒々しくドアを開け放って外に飛び出していった。

 残されたミアは、ただその開け放たれたドアを見つめたままぼんやりとしていた。