しばらくしてやっとルイトは顔を上げた。

「なんか変だなあ。優しいミアなんて。」

「変?なぜ?」

「だってミアってばいつも強くて、はっきりしてて、僕にはまるっきり容赦なくて・・・」

「・・・」


 いったいどういう顔をすればいいのだろう。

 先ほどからの話からするとミアという少女はかなり気性の激しい人だったらしい。

・・・何も覚えていないが。


「ごめん、こんなこと言われても困るよね。何も覚えてないのにさ。」

 ルイトはまた少し悲しそうに微笑んだ。

 が、それは本当に一瞬で、ルイトはすぐにまっすぐな瞳を向けた。


「それよりも、だ。・・・カイは、どこに行ったんだろう?」

「・・・カイ。」


 ざわり、と心が波立つ。
 その名を聞くと、心拍数が上がる。


「どんな人だったかは・・・覚えてないよね。」


 こくりとうなずく。
 ルイトは嘆息した。


「まったくあいつ、どこに行っちゃったんだろうね・・・?困ったやつっ。」

「カイって、その・・・太陽で一番強い人のことだったよね。」

「そう。君よりひとつ年上で高校3年生。あ、ちなみに僕は大学生だよ。二十歳で、今年3年生♪」

「あ、ルイトって結構年上だったんだ・・・。」

「そ♪でも気にしないでね~。」

「・・・たぶん、しない。」


 今さらできない。
 ミアはベランダの手すりに頬杖をついたルイトの横顔を見つめた。


 綺麗な淡い茶の瞳。手触りのよさそうな黒髪。
つねに微笑をたたえた表情は、整いすぎて近寄りがたくなってしまいそうな雰囲気を取り去っている。
 本当に綺麗な人だ、と改めて思った。きっといくら見ていても飽きないだろう。