「こっちの花のがいいですか?」


「そうですね。色合いを考えるとそうなると思います」

今まで聞こえなかった会話が急に聞こえた。
顔をあげるとお客と店員がすぐ隣で話していた。
そして店員さんと目が合った。

よく見てなかったけど、店員さんはすごくあたしのタイプ。


メガネをかけた目はあたしより大きいくらい。
長めの髪はさらさらそう。
にこっと笑ってる顔は少年っぽい。

あたしと同じか年下を思わせる感じだった。

「ありがとうございました」


どれだけ見つめていたかは分からないけど気がつくと前の客が出ていった後だった。

「あ…」

ひまわりを買おうとして話しかけたけど、その声はさっきの店員に遮られた。

「俺の顔、何かついてる?」

やっぱり気付かれてた。
大分長い時間だったと思うし。

「いや…ちょっとー早く終わらないかな、って」

取り敢えずその場で思いついた嘘を言ってみる。
店員さんは‘ふーん’と言って奥に行こうとした。

「あっあの、ひまわり」

「が?」

混乱して上手く言えない。

「ほしいなぁと思って…」

悪いことを言ってる訳じゃないのになぜか声が小さくなってく。
店員さんの目はあたしを捕えて離さない。