保健室の彼


「いないよ」

とっさに嘘をついた。
だって、先生好きなんて馬鹿みたいな話だから。

「そっか」

そのあと駅に着くまで、椋は黙ったままだったし、私も話しかけなかった。


いつもの駅で降りる。
椋も同じ駅だけど、家の方向は別。

「送ってくか?」

「いいよ、私意外と強いし」

「知ってる」

椋は、ふっと笑って片手を上げると、自分の家の方へ歩き出した。

私は、なんだか動けなくて、椋の後ろ姿をずっと見てた。