保健室の彼


彼女は急に、引きつり顔の私に頭を下げた。

「お願いします!この前のことは誰にも言わないで!」

綺麗で冷淡そうな印象の彼女に、一生懸命お願いされて、私はオロオロした。

「あ、頭上げてください!大丈夫ですよ。誰にも言わないですから」

彼女は、私の表情をうかがうように顔を上げて、「よかった」ってつぶやいた。

「私、先生がクビなんてことになったらどうしようと思って…」

彼女の目はちょっと潤んでいて、真剣さが伝わってきた。

ほんとに好きなんだなぁ…

「じゃあ、私は失礼しますね」

なんだかすごく羨ましい気持ちになって、
自分が馬鹿みたいに思えて、
彼女のことを直視できなかった。

私は逃げるように保健室を去った。