保健室の彼


「ミナミ、人が来るよ」

来るよというか、います。
ここに。

先生は、自分の腰にまわされた腕をそっとはずし、彼女から離れた。

「先生、私のこと避けてませんか…?」

彼女は、ほどかれた手を見つめながら訊いた。

「避けてないよ。心配しないで。これから職員室に行かなきゃならないから、少し外すね。君も早く帰りなさい」

机の上のファイルを取り、無言のミナミさんの頭を軽くなでて、先生は出て行った。

彼女は、しばらく先生が出て行ったドアを見つめて、それから、力が抜けたようにソファに座った。