保健室の彼



忘れ物を取りに教室に戻ったとき、中から声が聞こえた。

「お前ら何やってんだよ!里穂は何もしてねーだろ!」

「だって滝沢君に色目使うし…」

色目って…

「あいつはそんなことしてない!俺が勝手に構ってるだけだ」

「滝沢君て里穂のこと好きなの?」
リーダー格の子が問い詰める。

「好きだよ。だから、里穂に何かしたら許さない」

びっくりした。
嫌われてると思ってたから。

私は、教室には入らずに
そっと来た道を戻った。

何も聞いてないことにした。

でも、
あの日以降、椋に会うのが嫌じゃなくなった。
中学も一緒で、だんだん仲良くなって、
今でも一番の“友達”。