「コーヒー」
席につくなり、娘の美香(ミカ)はそう言った。
とりあえず俺もコーヒーを頼み、美香の真向かいに座った。
「飯は…いいのか?」
おもむろにタバコを取り出し、吸い始めた彼女に聞くと「時間ないから」と素っ気なく言われた。
「美香から珍しいなぁ。誘ってくれるなんてさ」
なんとなく漂う嫌な空気を打ち消したくて、明るくそう言うと、
彼女は「ふぅー」っと煙りを吐き出しながら言った。
「今日連絡したのはさ、お父さんに頼みたいことがあるんだよね。
最初で最後の」
「ん?なんだ?できる範囲なら、精一杯協力するぞ」
俺がそう答えると「よかった」と美香は、今日初めて笑ってみせた。
その笑顔はとても可愛く、俺は彼女と元妻を捨ててしまったことを改めて悔やんだ。



