「じゃ行ってくる」 夜の9時。ケンさんはそう言うと、ちらっとアタシを見て何か言いたそうな顔をするんだけど、 結局言わずにいつも行ってしまう。 「いってらっしゃい、ケンさん」 『言いたくないことは聞かない』 これはケンちゃんに言われたこと。 アタシもそう思うし、きっとケンさんもそう。 だからアタシはいつも笑顔で見送っている。