今日、変な人に会った。
変な。
変な警察官。
変なおまわりさん。

ダンススクールの帰り道、アタシはケータイを拾った。ヒロはほっとけって言ったけど、アタシは交番に届けることにした。
だって、妹のケータイと同じだったから。

1人で駅前の交番を覗いたら、中に先客のばあちゃんが座ってた。
ばあちゃんは裸足だった。
ボケ老人。

頭の中で変換する。
アタシに一番関係ない人種。
シカトして、交番の中に入る。ポケットからケータイを取り出して、机の上に置いて、帰ろうとしたその時。
外から誰かが入ってくる音。同時に。
「ばあちゃん!家わかったからね!帰るよー。」
ハスキーな声がした。
振り替えると、若い警察官がいた。
身長は170は越えてる。
男にしては、細い線の。
私を見るとちょっと驚いたみたいに目を見張って、机の上のケータイを見つけると、合点がいったようにゆっくり笑った。
「落とし物、届けてくれたの?ありがとう。」
言い方がまるで小学生に話すみたいで、アタシはムカついて黙って外に出ようと思った。
「拾ってくれた人には、名前とか聞くんだけどなあ。」
のんびりとした声がする。ムカつく。
と、いきなり。視界がゼロになった。
顔をあげると同時に、警察官がアタシの手に何か握らせた。
「ご協力感謝します。」

その手のやわらかさは。
私のイライラしたキモチをあっという間に無くしてしまった。

その彼は、彼じゃなくて彼女だとわかるまで、一秒。
手の中にあるのが、アタシの好きなミルキーだとわかるまで、一秒。

彼女が私の頭を撫でて、その手を思い切り払い除けるまで、一秒。

三秒後には、アタシは交番を飛び出していた。

しっかり手の中にミルキーを握りしめて。

振り向くと、彼女はばあちゃんを軽々とおんぶして、立ち上がるところだった。
変な警察官。
変な女。

そして、これが。
アタシとりきちゃんの出会いになる。

島田 利樹。
りきちゃんはかなり変人みたいに私の人生に現れた。