『酷い雨ですね‥』


喧騒に紛れたその声に
私はハッとなり我に還る。



ズブ濡れの肩の辺りを
払いながら、

この空模様に似合わない
爽やかな笑顔がそこに
あった。



『なかなか止みませんね‥』


彼に負けない位の笑顔で
今度はちゃんと私が応えた。


『あの‥良かったら‥
映画‥観ませんか‥?

雨宿りに‥ 』



また“ドキン”となりながら

そのセリフを今度は
私が言った。


『‥今、僕も言おうと
してたんです。』


また白い歯が溢れた‥。



《運命の出逢い》を
映し出す8ミリフィルムは
劇場の中に消える

二人の背中を

何時までも

映し続けていた‥




セピア色に変わるまで‥



END