スクリーンに
映し出される恐怖‥

ヒロインの悲鳴‥


恐怖指数が最高潮に達した時

私は彼の横顔を
チラリと見た。

彼はギュッと眼を瞑り、
その場に硬直していた。

胸のドキドキが速さを増す‥


私はこれが映画のせいなのか?
彼のせいなのか?

判らなくなってきていた。


結局、私は最後まで
席に残っていた。


外へ出ると、先ほどの
雨は上がり、薄曇りの空の
隙間から太陽が見え隠れ
していた。


『意外と怖く無かった
ですね‥。
付き合ってくれて
ありがとう‥。』



私は彼の「怖く無かった」
という嘘と、向けられた
爽やかな笑顔に微笑み返すと

運命の続きが見たくなり、
気が付くと彼の後ろ髪を
引っ張る言葉を探していた。


『あの‥。
映画‥奢って頂いて‥
良かったら‥
コーヒーでも‥。
奢らせて下さいっ!』


言っちゃった‥



『是非!
コーヒーなら僕が‥
映画に付き合って貰った
お礼です‥。』


またもや白い歯が溢れる‥


“ドキン”は既に早鐘と
化していた。

アルコールを飲んだ様に
ポカポカとした血流が
体内を巡るのが判るくらいに‥


《運命の歯車》が
廻り始めたのだ‥