青年は腰に巻いた鞄から手帳のようなものを取り出し、開いて警備兵に見せた。

 女性も諦めたように溜息を吐きながら、それに従う。

 警備兵は少しばから驚いた表情を見せ、素早く敬礼した。

「ダブル・アイズ代表ロズウェル=ルイスだ」青年は、だらしなく敬礼を返しながらロズウェルと名乗った。「そしてこっちが俺の美人秘書」

「コウ=ティンバーランドです。今回は貴方がたから寄せられた報告について調査に来ました」女性は、一礼してからコウと名乗った。

「え、遠路遥々ご苦労様です、ルイス代表殿並びにティンバーランド秘書官殿!」

 うーん、と言いながら、ロズウェルが頭を掻く。視線は、二人の警備兵の足元に向いている。

「普通にロズウェルって感じに呼び捨てで構わんぜ? 代表だなんて言っても、まあ形式上そうなってるだけでさ。別に何にも偉くない。あんたらと変わらんわけだし」

「めぇ、滅相もありません、英雄殿に向かって呼び捨てなど」

 警備兵の一人が、下を噛みながら言った。もう一人の警備兵は、これでもかというくらいに首を振って、そのようなことを出来る筈がないと体で示している。

 ロズウェルの視線は下を向いたまま。しかし、今度は警備兵のではなく、自分の足元を見ている。表情は先程より僅かに曇った。