「そんなの、口先だけに決まっているわ」

「そんなこと仰らないでください、アレクサンダー様はシェスカ様のお父上、唯一のご家族ではございませんか」

「そんなの、関係無いわ。それに、あんなやつが唯一の家族ってわけでもないわ。あたしにとって、コウは姉さんのような存在……そうでしょ?」

「光栄です。でも、どうか自身のお父上のことをあまり悪く言わないでください。パーティにも参加してください、シェスカ自身のお祝いなのですから」

 コウは、悲しみと喜びが混じったような表情で頷いた。

 シェスカの父アレクサンダー=ホーキンスは、ここ百年間で最大の発見と言われている生ける人形、通称『ルド』の研究及び開発における世界的権威である。

 また、シェスカの母、つまりアレクサンダーの妻はシェスカを産んだ直後、この世を去った。

 コウは、幼い頃からのお世話係であり、シェスカとは十歳年が離れている。一番長く同じ時間を過ごしているコウを、シェスカは姉のように慕っていた。

「うん、まあ……コウがそう言うのなら……」

「ありがとうございます。どのドレスをお召しになりますか?」

 コウの問いに、天井を見上げて少しだけ考えるような素振りをシェスカは見せてから、答える。

「去年も着た、あの青のドレスが良いわ」