「先生、怒ってなかったね」

「な。すぐに忘れる人でよかった…」

 二人が校舎を出ると、すでに辺りは暗くなっていた。

 校門を出たところで武人が立ち止まる。

 誠一が振り向くと、武人が帰路とは反対の道を指していた。

「俺、買い物あるからコッチ」

「あぁ、そっか。そんじゃな」

「ん。じゃーね」

 誠一はなんとなく遠ざかっていく武人の背中を見送る。

(…いっつも忘れそうになるけど、あいつ色々と大変なんだよなぁ)

 ボーっとそんな事を思いながら、誠一も帰路についた。