「や、やめてくれッ!!」

 暗い路地裏に男性の情けない叫び声が響く。

「く、来るなッ、来るな来るな来るなァ!!ひッ」

 叫び声は引きつり、不自然にぷつりと途切れた。

 突然の静けさが辺りを満たす。

 そんな路地裏をそっと月明かりが差し込み、照らし出した。

 微かな明かりの中、見えたのは声の主であろう男性だけだった。

 男性は壁に背中を預けて座り込み、首はうなだらせている。



 すでに



 死んでいた。



 唐突に辺りに微かな、でもくっきりとした歌声が流れ込む。

 美しく、神々しい聖歌。

 男性を優しく包み込むような歌声は、しばらくの間、路地裏に響き渡っていた。