トーコが来るなんて分かったら、兄貴は恥ずかしさで家を出て行くだろう。


「トーコって……若宮?」

俺の視線は、兄貴の方から床へとおりた。


バツが悪い。

何も言わない俺に、兄貴は再び会話を始めた。


「クリスマス、家に来るのか?若宮、何も言ってなかったけど……」


「兄貴、トーコに会ったの?」


「あぁ、この前学校帰りにさ。クリスマスどうするか聞かれたから、誠吾達と遊ぶって言った。あ~、この話はまた今度な」



兄貴は机の上にあった雑誌を本棚に直し、一階へ向かった。


え?いま…なんて言った?

俺の目は見開かれたまま。
すれ違うとき兄貴の肩が俺の肩にぶつかった。

ドアの幅は狭く、俺は避けようともしなかったからだ。

その場に立ち尽くしたまま、俺は唖然としていた。


トーコはクリスマス、兄貴が家にいないことを知っていた?

じゃあ……なんで何も言わない?


なんで……