「ト……」
細い指先が、俺の唇を軽く塞ぐ。俺の鼓動は先ほどにも増して動き、同時に体の奥から湧き上がる熱い感情に混乱していた。
「やめようなんて、言わないでよね?」
顔を赤らめながら、唇を尖らしそう呟くトーコ。そのまま、細い指先で俺の唇をなぞってくれたらいいのに。
ささやかな願いは叶うはずもなく、俺の胸は高鳴るだけ高鳴って、損をしているようだ。微かに震える指先に気づいたのは俺だけで……精一杯背伸びをしているトーコをこれ以上困らせたくなかった俺は、トーコの指先を強く握り締めた。
驚いたトーコは素早く俺の横顔を見る。
目と目が合い、夕焼け色に染まったオレンジの髪が風に靡いた。
「分かってる。7時だろ?」
握った手が熱くて、このまま、くっつきそうなほどに……離したくはないと必死に願う。瞬間、トーコの手が弾んだかのように、俺の手からするりとすり抜けた。ぶわっと花が開いた感覚だ。照れたトーコの姿が、俺の胸の中をぐるぐるとかき混ぜる。だけど、恥ずかしさのあまり、俺は彼女に対してそっけない態度。わざと後ろを振り向いて、「もう行こうぜ」と、一言呟く。