「あ……」


声が出ない。

声を絞り出そうとしても、出やしない。

あの日のことが、走馬灯のように、流れこむ。

脳内の映像は、とてもクリアで、俺の体を自然と震わせていたのだ。


だけど、後ろにはトーコもいる。もし、トーコに何かあってみろ。
どうなったって構いやしない。
俺の体で、トーコだけは守らなければ……。


そう思うと、震えは次第に収まり拳に力をこめていた。

強く、叶を睨みつける。

そんな俺の姿を前にして、叶はふっと笑みを見せる。

「何もしねぇよ。そんなに警戒すんな」


言いながら、何本目の煙草だろうか。新しい煙草を取り出し、火を点けた。


「あれから、パクられちまってよぉ。今は……鳶やってんだ」


「トーコ、行くぞ」


小声でそう呟いた俺は、叶の言葉を無視してそのまま通り過ぎようとした。

瞬間、ぐっと腕を捕まれてしまった。