私は息を飲みこんで、一歩ずつその扉に近づいた。


開いている扉を、智也はその体全体で塞いでいる。


智也は壁に手を伸ばし、私が通れるくらいの隙間を少し作った。

長身の智也に対し、低い背の私。


真っ直ぐ背筋を伸ばしてみても、智也の肩に私の頭のてっぺんは届かないのだ。


その壁と智也の腕の《トンネル》を通り過ぎようとしたとき、頭上から声が聞こえた。

「残念。水着だと思ったのにさ。あ、もしかして生理?」


年頃の女の子にそういうこと聞く?!


いるよね、こういうことばかり言う奴。


「水泳部はね、今の季節プールサイドで筋トレばかりなの」

「へ~、だから体操服なんだ」


納得して頷く智也に対し、私は滑り落ちてきた手に気づいた。


「智也!手!どけてよ」


私の頭上にあったその手は壁を滑り、私の視界を遮る。