「な……なんだよ、お前。行く相手がいないのか?寂しいよなぁ」


ハハッて、鼻で笑うも、虚しく思えてきて、すぐに言葉を見失った。


トーコは何も語らない。

ただ、じっと、校舎を囲む、高い壁を見つめている。


だからなのか、俺もまた、無言のまま、坂を下りた。


「帰るの?」


「あぁ」


このまま、トーコを見つめていたら、俺……きっとやべーんだ。

理性なんか吹っ飛んで、お前を傷つけてしまいそうで怖い。


スタスタと駅に向かって歩く俺。


「ねぇ。ねぇってば!智也!」


背後から聞こえた、トーコの声に、歩みを止めてしまった。


俺は振り返らない。


あいつの顔、見たら……あいつに触れられたら……心に張り巡らせているガラスの壁がボロボロと崩れ落ちてしまいそうだから。