駅から10分ほど、真っ直ぐに歩いた。

長い坂をのぼり、住宅街を抜けると、目の前に大きな校舎が見えてきた。

東郷大付属高校。


私立の男子校だ。


大学は共学で、この敷地内にはなく、少し離れた別の場所にキャンパスはある。


「広いね。やっぱり、中学の校舎もあるからかな?」


「まぁな。でも、この広い校舎ほとんど男だらけなんだぜ?暑苦しいっての!これから、夏だし、先が思いやられる……」

言いながら、俺は言葉を濁す。


夏という言葉に、過剰に反応してしまった。


あ~、くそっ。どうした?俺。

なんで、こんなにドキドキしてんだよ!


ただ、夏祭りに誘うだけじゃん。別に、今すぐに告白しろとか、そういうことじゃねぇじゃん。


普段通りに誘えばいいんじゃねーか。


俺は、ゆっくりと息を吐き出して、校舎を見上げ立ち止まっているトーコに問いかけた。