「好きな人に勃ちゃいいじゃん」


「あいつは……兄貴のことが好きなんだ。それだけは変わらない。変わるわけない」


腕で顔を覆う。安司に目を見せないようにする為だ。

安司はそんな俺の真横に座ると、口を開いた。


「智くん、気持ちってね案外もろいの。簡単に揺らいでしまうときがある」


「だから、なんだよ?何がいいてぇの?」


「智也は不器用なんだよな。うまく見せてるだけ。自分とは正反対の兄貴に劣等感を抱いてるんだ。そして、今度は井上くんまで現れた。


小せぇっつーの。さっさと素直になりやがれ!」


「だから……素直になったじゃん」


指摘されたことが全て当たった所為か、俺は壁に顔を向ける。


「ダメダメ!はっきり好きだって言わなきゃ!」

ぎしりとベットのスプリングが軋んだかと思うと、安司が俺の顔に近づいてきた。


「これな~んだ?」


言いながら広げた一枚のチラシ。

夏祭りのお知らせが書いた紙だった。