「唇噛まれたのは初めてだな」


「智也が舌なんか入れるからでしょ?!」


「昨日のかけひきで俺はさ、どんなキスをするか言ってねぇぞ?舌は入れません…なんて言ったか?」


俺の言葉に、トーコは固まってしまった。


トーコを口で負かせるなんて朝飯前だ。


「満更…でもなかったろ?」


言いながら、俺は艶のあるトーコの髪の先に指先を絡める。


もう一度、その唇へと吸い込まれるように顔を近づけようとした。

だが、俺の足を思いきり勢いよく踏みつけるトーコ。


「いてっ!!おいっ、トーコ待てよ!」


去りゆくトーコの背中を見つめ、俺は指鉄砲で狙いを定める。


「お前は、いつになったら俺のものになる?」


お前に心臓を撃ち抜かれた俺のこの想いは一体どこにぶちまければいい?


俺さ、お前の心臓撃ち抜く自信ねぇや。


そう思いながら、俺は構えていた指鉄砲の手を拳に変えた。