あいつの心の傷に比べたら、俺なんて……。


昔からイジメられていて、体に大きな傷がある安司が笑顔を絶やさず、懸命に生きているというのに、ただの嫉妬で実らない恋に腹立てていた自分はなんてバカなんだと、安司と出会ってそう思った。


「ほら、さっそく雑誌読もうよ」


安司の家についた。


安司は部屋に入るなり、ブレザーとカッターシャツを脱ぎ、着替え始める。


安司の逞しい体には、真っ二つに腹を開かれたような傷があった。



首の下、鎖骨の横あたりからへそまで直線に縫われた傷。


それから、わき腹、へそ横あたりに10センチほど真横に縫われた傷がある。


それを知ったときは、出会って間もない頃。


たしか、水泳の授業の日だった。


体育の授業では、そんなまじまじと、友達の体を見ることはなく、俺は全く知らなかった。


安司の心臓が、人より弱いだなんて。