智也の言葉で、私は今から何をされるのか察しがつく。


そう、私達は毎日キスをするというかけひきをしたのだった。


好きな人ではない人と口づけをするという現実逃避なのだろうか、私は今の今まですっかり忘れてしまっていた。


「塩素の匂い……」


ふと、智也は呟きながら、私の首筋に顔を近づけてくる。


「まだ髪も濡れてるんだな」


言いながら、私の髪の尖端を指先でそっと触れる。


鼓動が高鳴っていくのが分かった。


体が強ばってしまっていた。


そんな私の体は、智也に押さえつけられ、身動きが取れない状態。

ゆっくりと影が重なる。


夕日に照らし出された廊下で、智也の唇が私の唇に重なった。