「こんな……静かな部屋にリエさんを一人残して帰れるわけないじゃないっすか!」


静寂の中、俺の声だけが響いている。包み込んだ体は、とても細く微かに震えていた。



「俺、無理してかっこつけてたけど、まだガキだし……叶さんにはかなわないけど、叶さんの代わりに傍にいることはできます」


「智也くん……でも、好きな子がいるんでしょ?」


ゆっくりとリエさんを正面に向かせ、俺はその唇に己の唇を触れさせた。

「絶対に……手に入らないから。あいつの心は、俺には振り向かないって分かってるから」


抱きしめながら、俺はそう呟いた。


「忘れさせてください。あいつへの想いを全部……忘れさせてください」

一体、俺はどんな顔をしていたのだろうか。


今にも、泣き出しそうな顔をしていたのだろうか。


リエさんは何も言わず、俺に深い口づけを与えた。


舌の絡み合う音に翻弄され、ベッドへと沈み込む。


リエさんの首筋に唇を這わせながら、手は胸に触れた。


リエさんの吐息が、俺の理性を分散させ、思考回路をも散らせた。