リエさんはゆっくりと顔を上げ、俺の背中に手を回す。


「智也くんの心の中には、別の女の子がいるんだよね?」


見透かされていた。


何も言えぬまま彼女の目を見つめられず、滴り落ちる汗と共に、慌てて顔をそらす。


「私は、宗輔に愛されてないの。誰からも、愛されない。宗輔の一番にも、智也くんの一番にもなれない……。ただ……こうして傍にいてくれるだけでいいのに、なんでだろう」


無理やり、笑っていた。

俺に泣き顔を見られぬよう、リエさんは背を向ける。

「ごめん……智也くん。もう、帰って……っ…」

瞬間、無意識の内に俺は背後から力強くリエさんを抱きしめていた。