くそっ、くそっ、くそっ!

心臓静まれっての。

トーコが後ろにいるってだけで、歩く素振りさえ格好つけてしまう。


ほら、もうすぐ正門だ。

俺達の家は正門を出て、右に曲がる。
トーコはもちろん、右に曲がる。

だから、俺は敢えて左を行く。

これで、緊張しなくて済む……


「……っ……」


空気が歪んだ気がした。

俺の足は正門を曲がる寸前で止まり、その場から動けない。