もう一度手伝おうとすると、今度は拒む気配がなかった。

刹那は鼻を啜りながら、俺は刹那の様子を伺いつつ、無言で土鍋処理を行う。

「これくらいか」

額に浮かび上がった汗を拭う。

毒素が床に染み込んでしまって、何度こすっても取れなかったので放置する。

「とりあえず、明日から学校だからよ、風呂入って寝るか」

「恭耶、痛くないんか?」

そういえば、仮面の男に殴られた事を忘れていた。

足の火傷の事も思い出し、両方に痛みが走り始める。

「い、いたたたた、余計な事、言うんじゃねえよ」

「恭耶がアホなだけやろ。こんなん唾でもつけてたら、治るわ」

本気で唾を吐きかけてくるなんて、人道を踏み外してる。

「アホか!全然安らぐわけねえだろ!いてええ」

あの時は必死だったから何とかなったが、内臓のダメージは計り知れない。

「ホンマに、大丈夫なんか?」

「さっきからイテエを何回言っていると思っている。病院に電話してくれ」

これは不味い。

楓のように平気な顔して動けるわけがない。

「ちょう、待っててや!」

真剣な顔つきで、電話機のある場所に走っていった。

世間では携帯電話があるらしいけど、刹那や俺は持ってない。

別段、必要と感じたことはない。

連絡など家の電話があれば十分だ。

しかし、今は無駄な説明をしている場合じゃない。

数分後には刹那が駆け足で戻ってくる。

「すぐ来るらしいわ」

「悪いな。っつうか明日から学校だっていうのに、無駄な怪我なんか負わせやがって」

「恭耶がいきなり口の中にご飯入れてくるからやんか!」

「俺がお前の料理の不味さに気付かせてやったんだろ」

「そこは嘘でも美味しい顔するのが男の仕事やろ!」

「お前が男だったとして、アレで平気な顔を作れるのかよ?」

「ふん、無理や」

当然の話だが、威張っていう事ではない。