今度はデコピン。

「いたい!」

腕も額も痛い状態で、どちらをさすればいいかわからないようだ。

「お前が出て行くだけで、心配をする人間がどれだけいるか解ってんのか!?」

「うう、恭耶のアホー」

涙声になりながら、訴えるが覇気がない。

「じゃあ、お前はボケだ。言っておくがな、心配する人間の内には俺も入ってるんだよ!」

「嘘や」

「何で信じねえ?」

「だって、恭耶、ボクに酷いことばっかり言うんやもん」

「お前のは可愛さ余って憎さ百倍って奴なんだよ。俺に理想を傾けすぎだ」

「恭耶、もっと優しい人やもん、ボク、そう思ってたんや」

「お前なあ、過去と今を比較するのはどうかと思うぜ。人って変わるもんだろうが」

「もう、ボクの知ってる恭耶はおらんのや」

自分の殻の中に閉じこもってしまったのか、俯き姿勢だ。

「お前、自分が何を言ってるのかわかってんのかよ?」

「信じられへんもん」

「この大馬鹿野郎が!目の前を見やがれ!」

今度は頭を両手で掴み、俺の顔の前まで持ってくる。

「俺は裏表のねえ人間だってさっきも言っただろうが!お前に対して嘘ついて何になる!言ってみろよ!?」

「恭耶、怖い」

明らかに怯えの眼差しがあるが、俺は止める気はない。

「怖くても聞け!俺は俺だ!変わっても変わらなくても、お前の理想のために生きてるわけじゃねえ!!理想ってのはあくまで自分の中の幻なんだよ!それにな、お前は人の理想を壊す生き方をしてる人間に一番近いだろうが!」

「何で、そこまで言われなあかんのよ」

「最後まで話を聞け!理想に当てはまらなくても、良いとこを見つける努力は出来るだろうが!それを放棄して文句を言うなんて俺は許さねえ!」

「もう、いやや、聞きたない」

「逃げるな!立ち止まるな!お前のやるべき事は目を逸らして歩く事じゃねえ!目の前の出来事をしっかり目を見開いて捕らえることだ!」