正面の店のシャッターにぶつかり、背中に衝撃が走る。

「この野郎、いつの間に、そんな凶暴な技を覚えやがった」

俺は肩膝を立てて、そこに片手を置いて立ち上がる。

「恭耶専用や。喜び」

俺の財布を発頸を打つのと同時にスったのか、刹那の手の内にあった。

二千円を爺に渡して、クマの人形を受け取っている。

店から出てくると、財布を軽く投げる。

それを宙で受け取って、ポケットに直す。

「お前なあ、ちょっとは遠慮しろ」

「あんたもボクに対して遠慮したらどないなん?」

クマの人形を見ながら、毒づく。

「はあ、一々、喧嘩したくねえんだよ」

「ボクもや」

今日一日、刹那の怒鳴り声しか聞いていないような気がする。

元気があっていいのだが、俺からすれば苦痛を伴うから半端じゃない。

「ま、幸せになれるといいな」

少しくらいは優しくしてやってもいいか。

軽く頭を撫でる。

「その扱いが子供やねん!」

怒鳴るのだが、拳を放ってはこなかった。

表情も少しだけ柔らかくなっているようだ。

「じゃあ、帰るか」

いつの間にやら、辺りは紅く染まっている。

「ボク、お腹空いた」

「お前、さっき苦しそうにしてただろうが」

「恭耶がいらんこと言うから、体動かさなあかんかったんやんか」

「お前がじっとしてれば良かったんだろ」

「女の子に失礼なこと言わんように、恭耶はちゃんと教育せなあかん」

「ガサツなお前こそ、女の子になるための教育を受けた方がいいと思うぞ」

ツッパリで頬をぶん殴られ、顔から体に回転が伝わり、空中で横回転し地面に打ち付けられる。

「それがガサツっていうんだよ」

俺が痙攣する最中、刹那は先を歩いていった。