長々と保健室まで歩いていき、到着すると疲れながら保健室へ入る。

「くそ、なんちゅう広い学校なんだ」

女子をベットに寝かせ、扉付近にある電気のスイッチを入れる。

「何とかってとこだな」

気づいたら楓の姿がない。

「人に任せて何処に行ったんだ、あの野郎。ま、いいか。それよりも、顔を拝借させてもらおう」

女子に向き直ると、ベッドの上で背を上げていた。

「もう起きたのか」

「さっき」

「そうか、にしても大丈夫か?」

「何がなんだかわからないけど、大丈夫」

怯えた様にしながら俺の顔を見ている。

「どした、俺ってそんなに怖い顔してるか?」

「ううん、そんなことないと思う」

「それならいいんだけど」

俺は女子の顔を穴が開くほど見る。

ちょっと可愛いかも。

羞恥心が働いたのか、女の子は恥ずかしそうだ。

「あの、えっと、恥ずかしいよ」

女子の声で我に返る。

「ごめんごめん。前にどっかで会ったことなかったっけ?」

「君とは初めてだと思う」

「俺の勘違いか」

おかしいな。

俺の記憶力は人並み以上なのだがな。

女子が初めと言ってるんだから初めてなんだろう。

今はどうでもいいことだ。

「そういや、名前聞いてなかった」

「亜双佳那美、2年A組」

「2年だったんだ。その背の高さから一年だと思ったぜ」

「気にしてることをずかずかと」

「背も今後は伸びることはないし、気にすることでもないって。俺は鷹威恭耶、2年B組だ。よろしくな」

「心に刺さることばっかり言ってるんだけど、もう、いいよ。よろしくね!」

笑顔でそう言った。

この太陽のような明るい笑顔は忘れることはないだろう。