「楓を襲う奴もいないし、安心してもいいと思うぜ」

「それってどういうことかしら」

楓がポキパキと指を鳴らす。

本能がやばいと警告を出している。

「好きなようにとってくれていいぞ。今日は忙しいからさいなら!」

逃げるようにダッシュで教室から退避する。

「まちんしゃい!何もしないからさ!」

おもいっきし嘘だろう。

楓が鬼気迫る勢いで追いかけくる。

「これだから短気は困るんだよな」

文句を言いながら走っていると、曲がり角で人と衝突した。

「あいつつつ」

目の前には服装や髪を乱れさせながら女子が倒れている。

「何やってんの?」

俺の後ろには追いついた楓がいる。

楓は俺が一人でこけたと思っているのか。

「前に人が出てきたんだよ」

楓が前に出て女子の様子を伺った。

「気を失ってる。保健室まで運ぶしかないな」

「後は任せたぞ」

「あんたが運ぶの。ほら、さっさとしな」

「えー!なんで俺が!」

「君がぶつかったんだし、家に帰っても暇なんだろ。さっきの続きしたっていいんだよ」

「運ばさせてもらいます。お願いします」

気だるく女の子に近づくと、けつを蹴られる。

「面倒臭そうにやるんじゃない!さっさとせえ!」

何でここまでされなきゃならんのだ。

女子を背負いながら保健室に行く途中、顔が気になった。

どんな子なんだろうか。

暗くてあんまり見えない。

後で見てみるか。