「ムキにならんでええやん。恭耶は好きなようにすればええ」

俺は心配してるだけで、子供扱いをした覚えはない。

ムキになっているのは刹那じゃないか。

「ちょっと待てって!!」

疲れてるのにも関わらず、ペースを上げようとする刹那。

しかし、俺のほうが歩調が大きいので、すぐに追いつく事が出来る。

「ついてくんな!あんたに教えて貰うんなら一人で行ったほうがマシや!」

姿形も幼稚園なら性格まで幼稚園だな。

疲労で倒れられても困るし、強硬手段を取ることにした。

「ちょっとは頼れ!この馬鹿!」

後ろから抱きしめて、そのまま姫様ダッコの形に持ってくる。

「あんた、しつこいねん!!」

生きているマグロのようにジタバタするけど、何とか落とさないように堪える。

「ジタバタすんな!」

「余計な世話なんか焼かんと好き勝手したらええねん!」

「だから、好き勝手してるだろうが!」

刹那が墓穴を掘ってしまったようで、少し静かになる。

「あのな、後でおいしいもん食べさせる約束があるんだし、倒れて食べられないっていうのは嫌だろ?」

「うん」

ムスっと不機嫌ながらにも、素直に頷く。

「だったら、素直に従え。出来るだけ人に見つからねえようにしてやるからよ」

「君達、仲がいいな」

「「おわ!」」

速攻、人に見つかってしまった。

しかし、見つかったのは見知らぬ誰かではなく、知り合いの楓であった。

「今日はちゃんと学校に来てるんだな」

いつもサボリを決め込んでいる昼行灯なのに、休日にいるとは珍しい。

「ほう、君はそう思っていたわけか」

刹那を抱えてる分、好き勝手しないほうが良かったかもしれない。

しかし、刹那を抱えているおかげで、強力なデコピン一発で終了した。