今度は刹那が不機嫌になってしまった。

冗談を真に受けるのは止めて欲しいところだ。

ま、コンプレックスな部分をついた俺も悪かったりするわけだがな。

「何かおごってやるから機嫌直せよ」

「驕るのは当然や!」

ご立腹のようである。

「悪かったよ。ホラ、一番おいしいもんにするからさ」

「ほんま、謝る気あるんか?」

「あるって。でも、一緒に行きたくないなら、今日は家でゆっくりしとくけどな」

「誰も行かんなんか言うてへん!」

「それじゃ、用意して玄関に集合な」

常に切り替えを行わなければ、痛い目に遭うのは俺だ。

空になった皿を片付けて、用意をするために部屋に戻って着替える。

3分程度で用意を済ませて、玄関で座りながら待っていた。

5分、10分経っても、刹那が姿を現すことがない。

何に時間をかけることがあるのか。

20分後に長袖のシャツにキュロットの刹那が玄関に来る。

「おーいおいおいおい!遅すぎるんだよ!」

「髪が決まらんかったんやもん」

しかし、髪型は20分前と変わっていない。

「全然変わってないだろうが!幼稚園児なんだし深く気にするな!」

「女の子は時間がかかるんやって、何回言えばわかるんじゃ、アホが!」

溝内、顎、鼻に拳と蹴りが綺麗にヒット。

「いってええ!」

このお子ちゃまは優しく撫でるという方法を知らないのか。

「まあ、いいか。行くぜ」

痛む部分を擦りながら家を出る。

外は晴天であり、絶好の案内日和だった。

最初に行くところはすでに決めている。

「どこにいくん?」

「まあ、ついて来いって」

俺は先頭を歩いて、目的地へと向った。