「ほら」

近づこうとすると、腕を振って抵抗する。

「馬鹿!あほ!ノロマ!寄るな!もう、嫌いや!お前なんか嫌いや!」

嫌いといわれちゃしょうがない。

俺は近づくのを止めて遠ざかっていく。

「あ」

か細い声を上げたところで、すかさず刹那にタッチダウン。

「隙あり!」

後ろから羽交い絞めにするような感じで、刹那を持ち上げる。

思った以上に体重はないようだ。

「謀ったな!」

「こうでもしないと抵抗するだろうが」

暴れるが、先ほどよりは怖くない。

次第に暴れるのを止めて静かになった。

「風邪引くから、協力してやろうと思ってるんだ」

「うん」

再びしおらしくなった刹那を風呂場までつれていき、低い座椅子に座らせた。

「服は風呂の中に置いといていいぞ。洗濯すればいい話だからな」

刹那が裸になってしまうので、風呂場から撤退しようとした。

「恭耶!」

「何だ?」

「ホンマは嫌いやない」

「そりゃありがたいね」

それだけを伝え、ドアを閉めた。

「身体を流して立てなかったら、また呼んでくれ」

「うん」

しばらくすると、シャワーの音が聞こえてくる。

「ふう」

刹那のお漏らしの後を片すべく、風呂場にあったぞうきんを持ってリビングへと向う。

聖水の臭いを間近で嗅ぐほどのスキルはないので、さっさと終わらせることにした。